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スタッフ通信
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VOL.96 2014/12
顧客とお店のつながり方
その昔、串カツ屋さんを営業していました。今はもう閉店してありません。閉店した理由は、次第に客層が悪くなったのです。チンピラのような連中が来るようになって、店で大声を出したり、モノを壊したりするようになった。スタッフは怖がってしまって、挙句は一般のお客様も近寄らなくなった。収益的には十分にやっていけるベースだったのだが、閉店しようと判断した。
私達のような酒場ビジネスはね、上記のようなケースがよくある。悪い客が来るようになって、店は荒れていく、そしてスタッフも嫌がって、働き手がなくなり、モノが壊れて、雰囲気も最悪。そうなれば、お店なんてアッと言う間だ。閉店の道をまっしぐら。そんな痛い経験が私には過去にある。今でも夢に見る最悪な経験だ。
お店には、その店独自のキャラクターがある。上品な店、下品な店、色々な店があっていいと思うし、それが顧客の選択肢ってものだ。でもここで間違っちゃいけない事がある。上品な店だからと言って上品なお客様ばかりとは限らないし、下品な店だからと言って、下品な客が来るかと言うとそうではない。それらは、実は、その店で働く、スタッフの資質なのだ。スタッフの質とは、すなわち、トップリーダーの掲げる方向性や理想の中身だ。下品で理想もないような、そんなリーダーの下に集うスタッフは、正直言うが、下品である。感染するのだ。組織として、チームとして、上の考え方は、下に伝染する、それが私の考え方だ。つまりお店のキャラクターとして下品上品はただのキャラクターだ。中身を決めるのは、そこで働く人間の心であると私は考えている。
下町のいっけん下品に見える酒場の客たちは、いつも整然と席があくのを待っている。自分の番号札を握り締めて案内されるのを上品に待っているのだ。かと思えば高級そうな居酒屋ではいつも客同士の喧嘩が絶えない。嘔吐、つまり、リバースは頻繁で後始末にスタッフはうんざりしている。この違いは一体なんなのか? 良い店には、いつの時代も、良い顧客がついている。悪い店には、いつも悪い客がついている。その違いは一体・・・?
パリッと一本、筋の通った店では、カウンターに座っても、板前の手の空き具合をみて注文する。そこにはある種の緊張感や人としてのマナーみたいなものがあるからだ。顧客はそれを守らないと、板前の気分を悪くする事を知っている。店員を上手に褒めて、小鉢をサービスでゲットするのも粋な顧客のよくある話だ。または女将が気に入った客に対して一杯ナイショで持ってくるって事も昔はよくあった。
考えて欲しい。私達は顧客の奴隷ではない。そして顧客もまた、大切な人であり、ただの客ではないのだ。この普遍的なる酒場の常識を忘れて、一線を越えて、顧客が私達に対して人間以下の言動をする時、店のトップリーダーには、顧客に対する教育が求められるのだ。かつまた、スタッフが顧客に対して、尊敬のまなざしと、感謝の気持ちを忘れたとき、店のトップは、スタッフを再教育する事を徹底しなければならない。
私達店員は、顧客があって存在する。しかしそれは、いつの時代も、尊敬と感謝、慈しみと優しさの糸でつながっていなくてはならないのだ。そんな昔からの根底を忘れて、顧客をないがしろにする店は、顧客からもないがしろにされる。顧客と私達は、表裏一体。私達の見つめる瞳は、顧客が私達を見る目なのだ。そんな事すら忘れてしまった時、店は荒廃し衰退する。店内には汚い爪跡が目立ち始め、トイレは壊され、落書きが横行し、そしてお店は死んでしまうのだ。君の心がキレイなら顧客もお店もキレイはず。なぜなら、それが酒場ビジネスってものなのだ。どうせならキレイな店で気分よく働きたいものです。お客様の明日が元気になれるような、そんな酒場であるためにも・・・。