スタッフ通信


VOL.95 2014/11
形あるモノは壊れる
 大体において、形あるモノは壊れます。だから、当然にお店のモノのすべては壊れます。物が壊れたり痛んだりすることは、とっても自然な事です。だって、人が人としての活動をしている以上、やっぱりモノは消耗しますし壊れます。何の話かって? そう、お皿だとかグラスだとか装飾品だとか下駄に至るまで、モノ、つまり物体は、消耗するのです。
 私の経験において、わざとモノを壊す奴はそうそう居ません。まぁ、わざとモノを壊す奴がいたら、容赦なく叱るでしょう。でもそんな奴はいません。見たこともありません。
 普通、人がモノを壊すとき、大体において反省しています。「やばい! やっちゃったぁ・・・」ってね。例えば、グラスを割った。お皿を壊した。そんな時、決まって、イケてない店で発生するのが、「お前! 何やってんだ馬鹿野郎!」って・・・。私はそんな店が嫌いです。壊した彼だって、随分と反省しているんだろうから、そんな怒らなくたっていいじゃん、って思うんです。親方みたいな奴が客の前でも大声でスタッフを叱る。そんな店ほど、正直イケてない。私は、そう思っています。だって、私が客だったら、そんな店嫌だもん。いまどきね、フライパンで頭叩く店なんてないよ。マジでさ。皿壊したからって、大声で怒鳴ったって、壊れた皿は元には戻らない。なのに、怒鳴る。「なんで壊すんだ馬鹿野郎!」って。そんな店ほど、必ず衰退する。
 時代はね、ドンドン流れてく。その昔、徒弟制度が華やかなりしお笑いの世界だって、今は、NSCって学校制度で、徒弟制度もへったくれもない。師匠がいないから、怒られもしない。だからって、お笑いは、ダメになったか? 違う。むしろ大いに発展した。
 モノが壊れるのは自然な事だ。大切なことは、そこから、何を学ぶべきなのかって事。壊れたモノが壊れる原因のほとんどは、トップリーダーにある。つまり壊した本人に罪はないんだよ。皿が壊れたのは、店のトップのせいだし、はては、私のせいだ。そんなところに置くからだよ。とか、忙しいのに、ドンドンせかすからだよ。とか、そもそも、壊れる運命で、壊した本人に対して怒鳴ったって、一体何の意味があるんだろう。私は、そう思う・・・。大切な事は、壊れないようにするために、私達は、一体何が出来ただろうか、そして、これから、何が出来るだろうか? それを、みんなでよくよく考える事。
 その昔、職人が手持ちで高価な皿を持参していた。それをバイトが割っちゃった。で、案の定、職人は激昂してバイトに対して怒鳴り散らして、その子は泣いちゃった。偶然、私はその時に店に入って、事情を聞いて我慢ならず、こう言った。「だったら、持ってくんなよッッッ、ボケナス!」言葉は悪いが我慢ならない時は私だって我慢ならない。割った皿の代金を、その職人に払って、明日からもう来るなって私は言った。10年も前の話だ。
 形あるモノは必ずいつか壊れる。大切な事は、壊れたモノで、二次被害はないのかどうかしっかり考える事。二次被害は、お客様だけでなく、スタッフにもだ。割れたグラスを踏んで、足を怪我した光景は何度も見てる。バカな店は、それを何度も繰り返す。壊れたお皿でお客様が指を切ったりする光景も何度もある。イケてる店はね、壊れた事は壊れた事。その事実を受け止め、二次被害がないかどうかを予想して、スタッフやお客様に注意喚起し、かつ、壊したスタッフが動揺しないように、励まして、笑顔をつくって、客席へと送りだす。そんな事がきちんと出来ている。皿は金を出せば新品ですぐに元通りだ。でも君の怪我は、金でも元に戻らない。割るや壊れるなんて大した事じゃない。大事なのは、そこから何を学ぶかだ。アナタのチームは、満塁ホームランを打たれたピッチャーを責めますか? それとも、励まして、後続を三振させますか? 考えればわかるよね・・・。
 人間は神ではない。誤りをすることころに人間味があるのだ      山本五十六

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