スタッフ通信


VOL.82 2013/10
作業と作用
 飲食店はいつも作業と作用に分かれる。これは私の持論です。作業とは、すでに決まった事柄をいつも同じ動作にて行う仕事、作用とは、他者に何らかの影響を与える仕事。そう考えてください。どちらも非常に重要な仕事です。
 突然ですが、今月は、作業と作用、について考えてみましょう。
 とかく、社会の仕事では、求められる内容が、その業種によって違ってきます。作業だけを求める仕事もあれば、作用のみを求める仕事もあるでしょう。
 工場作業員が作業をせず、作用のみを勝手気ままに行うと、工場のラインは崩壊してしまいます。また作用を深く求められる舞台演出家が、日々の作業のみに執着すると、演出なんて成立しません。
 勘違いして欲しくないのは、作業と作用、どちらが上だとか下だとか、どちらが重要だとか、どちらがどうという、そんな話をする訳ではありません。大切な事は、その仕事は、作業なのか、作用なのかをしっかりとわきまえて、事をこなす必要がある。そういう事が言いたいのです。
 では、接客サービスの基本である飲食業、居酒屋業に特化して、考えてみましょう。冒頭の通り、私達の仕事は、いつも作業と作用に分かれます。他の業種と違って、私達の仕事の場合は、かたよることなく、作業と作用、どちらもうまく店内に配置されています。例えば、ドリンクを作る、皿を洗う、グランドメニューの注文をこなす、料理を運ぶ、などは、作業です。一連の、所作、動作が、すでに決まっていて、注文という依頼から作業が発生します。
 逆に作用とは、いつも、創造的なる考察から発生します。黒板メニューやグランドメニューを考える。お料理を手渡す。お客様をお見送りする。等のように、そのしくみを考えたり、いつも違う内容が求められる、それが作用です。作用は、いつも他者に何らかの影響を与えます。具体的には、作用とは、作業に、多大な影響を与えるのです。
 アナタが日々行っている仕事は、作業の場合と作用の場合が、ほどよく均等にあります。それが、居酒屋業です。オープン準備は作業だとしても、お客様との接客は必ず作用です。オープン準備はいつも同じ動作だとしても、接客をするって行為は、いつも顧客に何らかの影響を与える創造的仕事であり、それらは千差万別、いつも同じ接客なんてものはないからです。
 お料理をお持ちする時は同じ行為で客席のドアをノックするが、お見送りのサヨナラは、お客様によっていつも違ってくるはずです。大切なことは、作業と作用のどちらを今自分がしているのかを知りながら、業務を行うということなのです。
 作業と作用、どちらも重要な仕事です。しかしながら、作業と作用が逆転している滑稽なケースを私はよく目にします。勝手にグランドメニューの内容を変えてしまって得意気に自慢する。毎度同じ言葉の繰り返しでオウムのようにお料理を提供する。どうですか? 作業と作用が逆転しているのがわかりますか? 
 とかく、人が人に接する時、それは、いつも、作用でなくてはなりません。接する目の前のお客様に対する影響が大きいからです。作用はいつも変化します。それら作用の構築で作業が発生し、発生した作業は必ず順守される必要があります。また作業に問題がある場合には、作用を再度検討し、更にすぐれた作業が出来るように努力をしなければいけません。作業と作用・・・。アナタはこれらを理解しながら、仕事をした事がありますか?

 自分で無意識にやっていることを、もっと意識しなければならない   イチロー

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