スタッフ通信


VOL.80 2013/08
花火大会から何を学ぶ?!
 この度の花火大会によって、被害にあわれた方々の一刻も早い快復を願うと同時に、お亡くなりになられた方達のご冥福を、心からお祈りいたします。
 約二十数年ぶりでしょうか・・・。もともとから家族には何も出来ず、創業して以来、花火大会の時は、いつも現場で生ビールを提供していました。子供はどんどん大きくなっていき、気が付いたら、みんな、私と花火大会に行く年齢ではなくなってしまう・・・。そんな思いもあり、今年は、長男(14歳)を除いた、家族全員で、花火大会を現地まで見にいく事にしました。家族で行くのは初めての事です。
 子供のころの思い出といえば、屋台の照明や、雑踏や、浴衣や、りんごあめ・・・。そんな楽しい思い出があんなにも凄惨な事故となるなんて。その時、私は、一番下の子の手をひいて、人ごみの中に吸い寄せられるように入って行きました。なぜだか、すごく恐怖を感じていました。もともと私は、異常なくらい、危機意識が高く、臆病です。そんなだから、常に先読みをしてしまう癖がついているのです。それらは、営業現場からの手痛い失敗からきています。私の先読みの甘さで、今まで、お客様に不愉快な思いをさせてしまったり、スタッフに悲しい思いをさせてしまった。そんな後悔が、常に私を、無意識にも、先読み癖として、習慣づけているのです。
 その時、私は、雑踏の中にある、人の気配が、少し異常な感じだなと思いました。殺気というか、妙な気配というか・・・。そんなものを感じていました。御霊公園に並んだ屋台の列には、たくさんの人の足で出来た砂煙が舞っていました。その横でかき氷を美味しそうに食べる子供たち。普通、飲食店のキッチンは、土間かリノリウムの床と決まっています。土や板では食中毒の元になるからです。衛生時にも問題が多く、地面の砂煙なんて、かなりリスクのある食中毒菌の元です。保険所、よくこれで許可出しているなぁと感じていました。危険な食中毒菌は、土の中に多くいるのに・・・。
 屋台のフライヤーも、不均等でバランスの悪いレンガに乗せられていました。子供たちがふざけて、少しあたると、倒れるんじゃないかなぁ・・・。倒れたら、フライヤーの油は飛散する。子供たち逃げられるかな・・・。焼き鳥の屋台では、時折、炎がワッ、っと、あがっていました。鶏皮や豚油部分を焼くと当然の事です。炎がビニール生地に引火したりしないかな? 高さがあるから、そんな事はないのかな・・・。火元は炭かな、ガスかな、ガスか・・・。でもなんで、消火器がないんだろう。飲食店だと、一発でアウトだな。消防の立ち合い検査ってあるのかなぁ。そもそも屋台って、どこが管轄官庁なんだろう。営業許可申請ってどうなってるのかな? お好み焼きの生地は随分な量が、ゴミポリ容器に大量に入っている。この暑さで痛んだりしないのかなあ。鉄板で焼くから菌は死滅するな。あまり売れてないようだし、大丈夫かなぁ。
 子供の時には、考えもしない事が、大人になった私の脳裏をよぎっていきました。私は、今、飲食店従事者です。子供のころ、お金をさわった手で、かき氷の氷をさわる事がダメな事だなんて考えていなかった。でも、今、あきらかに、昭和の香りただよう屋台ビジネスってものが、完全アウトだとわかる。非常にリスキーだし、確実に誰かは家に帰って下痢になっている事だろう。明石で起きた花火大会歩道橋圧死事故。北京オリンピックの時の将棋倒し事故。ビックサイトのエスカレーター逆走事故。この人ごみだ。誰かが、冗談で「人殺し!」って叫ぶと、確実に、パニックになり、圧死か、予想外の事故で、人が死ぬな。そういえば、母親は良く言っていたな、「ひとごみは気持ち悪いからキライやねん!」って・・・。そんな事を考えながら、歩いている時でした。隣の浴衣のお姉さんが指差しました。前方の方から煙が。そして、次の瞬間に、ボッと、火の手が見えました。浴衣のお姉さんの眼に見えたのが、二回目の爆発であった事を、私は、後で知りました。随分と、向こう側でアナウンスが聞こえました。火事である事がそのアナウンスで分かりました。通りの人達は、まだパニックにはなっていませんでした。皆、何があったのかわかっていないようです。人ごみに押されるのを避けて、私達は、流れの外に出ました。携帯でツイッター検索をして、事態の情報がすぐに入ってきました。そばにいない長男に連絡をしましたが、まったく携帯がつながりません。
 常にみんなに言ってきたつもりだった。現場でも、何度も、何度も、言ってきたつもりだ。それは、危険予測(常に危険を予測しろ!)、注意喚起(注意があるぞって言え!)、未来予想(危険な元を改善して未来がそれで安全になったか考えろ!)。
 目の前にて火事が発生している。ツイッターでは、何かが爆発したと書かれていた。他の書き込みでは、そんなに大した事じゃないみたい、ってな事も。どちらにしても、圧死、死傷、パニック、逃げれない、そんなワードが私の脳裏をかすめました。妹から殺気だった声でライン電話がきました。自分の子供がどこにいるか不明らしい。後で聞いた事だが、妹は、事故現場のすぐ近くに座っていたのでした。当時、霧の噴水のように吹き出すガソリンと、その後の爆発の目の前に妹はいたのだそうです。
 その後、私達は、大会会場から、一番先に離脱しました。私達は難を逃れました。途中、花火を見に、現地に向かっていく観客達も多数いました。情報を得ていないのです。彼らはすぐに引き戻すだろう。歩いて帰る。花火もあがらない夏の夜道。何があったか理解しているのか、いないのか、どちらにせよ、子供達は、それはそれで、楽しそうでした。ケラケラと笑いながら歩いて帰りました。私は複雑な思いで状況の把握の為に、携帯を操作していました。
 今回の事故から私達は一体何を学ぶべきでしょうか? リスク管理も限界があるだろう・・・。未来を予測して危険を回避する事にも、限界がある。でもね、今、この状況は、どういう状況なのかを、考える、その意識がなければ、リスクを感じる事も出来ない。そういう意味では、ひとごみの中に入っていく。たった、それだけの事だけど、それはそれで、十分なリスクであると理解しなければいけない。そして、私も、私の両親も、近所の多くの方々も、花火の日に、現地にいって観覧したりせず、道路から、商業施設のテラスから、そんな風に、観覧している人達もある。それは、無意識の危険回避なのかもしれない。
 私達は、今回の事故から、何を学ばなきゃいけないのか。生肉のユッケを大量に子供や老人に食べさせると、リスクが高い。飲食店として、常識であると同時に、親の常識でもある。でもそんな常識が通用しない世の中なのかもしれない。なぜか!? それらは、安住の地に長く住みついてしまった安堵感からくるものかもしれない。子供達は、自分では、自分の身を守れない。だから、大人として、守ってあげなきゃならない。同じように、観客や顧客は、自分で、自分の身を守る意識に乏しい。だから、私達、サービスを提供する側は、人一倍、リスクに敏感でなければならない。
 この度の事故は、大変に不幸な事故です。そして、避けられたかと言われれば、避けられなかっただろう。それはなぜか、注意意識が、どうしても乏しくなってしまう、そんな状況が根底にあるからだ。娯楽施設や風俗施設は悦楽の状況下だ。私達、飲食店もその中のうちだ。そんな施設下では、どうしても注意喚起の意識が乏しくなる。
 今回の事故を、未来に生かさないと、亡くなった方々の命は無駄になる。大切な命を無駄にしない為にも、今一度、考えてもらいたい。事故は何故発生するのか? 注意はどうして意識の下に消えるのか? アナタを守る為にも、そしてアナタの大切な人達を守る為にも!

 考えなさい。調査し、探究し、問いかけ、熟考するのです。 ウォルト・ディズニー

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