スタッフ通信


VOL.73 2013/01
お客様の秘め事を守るべし!
 酒場ビジネスには秘め事がつきものです。だからどうしても内緒にしなきゃならない事も多いです。そもそも酒場で店員として働く時、嫌でも常連様の事がわかってきます。どんな仕事をしてて、どんな飲み物が好きで、奥様はどんな人で、上司は誰なのか。なんて事まで見えてくる時があります。スタッフとしてそれはとても良く仕事が出来ている証拠なのですが、その重要さをわからない飲食従事者が多くなっていると私は感じています。
 つまり、顧客の情報は、これすべて個人情報です。顧客はね、好む、好まない、にかかわらず、個人情報を私達にさらけ出します。時にその人をお父さんと呼んだり、時に恋人の名前を呼ぶことで、私達は、この人が父親なんだな、この人が恋人かぁ。なんて、わかってしまうのです。そして私達が知ってしまうその情報の量は、酒場ビジネスの場合、他の商売と違って圧倒的に多いのです。
 先日の事です。とあるお店で、居酒屋の制服シャツをそのまま着たバイト君達がごはんを食べてました。餃子の有名な店です。となりに居た私に彼らの会話が聞こえてきます。どうやら今日接客をしたお客様の事のようです。内容は、---あの係長、たちが悪い。隣の女の人、嫌がってたよ。あれ彼女だよ。マジで! かなり酔ってたぞ。嫌な感じ〜!---
 うちのスタッフでないのが救いです。飲食店、居酒屋、酒場、はたまたスナック、ラウンジ、その他の雑多な水商売のすべてには、徹底した、個人情報の保護が必要だと私は考えている。しかしそれらは昨今、崩壊している。だから私は声を大にして言いたい。君たちが接触するお客様から聞いたことを絶対によそで言うな! お客様の情報を外にもらすな! それらには細心の注意を払うべきなのです。そんな事はわかっている? そう、私達は皆そんな事わかっている。いちいちブログに顧客の事を書くバカはいない。と思う・・・。
 本当のプロ的接客は、守秘義務をしっかり意識してくれるものだ。守秘義務とはすなわち、秘密をしっかりと守ってくれる、そしてこれは、接客業の義務であるって事をプロは知っている。顧客の情報は私達のような酒場ビジネスには切っても切れない。だから予約帳に書かれたお客様の名前、電話番号、これらすべても大切な個人情報なのだ。
 中には不倫でご利用のお客様もいるだろう。乱れて愚痴を吐いたり、上司や部下の不満を言ったりするだろう。でもね、そんな秘め事をする場所が酒場だ。そうしてストレスを発散させたり、愛を語り合ったり、失いかけた未来の希望をさがす場所、それが酒場なのだ。お客様が、人として、とっても醜い部分をさらけ出す時もあるだろうけど、それでいいのだ。それをする場所が酒場で、その秘め事を守ってあげるのが私達の仕事だ。そして、決して忘れてはならないのは、それをさせているのは、君がお持ちしたアルコールなのだ。店の照明やBGMなのだ。つまりはお店がお客様の心を助長させているのだ。酒場とはそういう場所なのだ。顧客は店の雰囲気感で、本当の自分をさらけ出し、ストレスを発散させる。そうやって明日を生きる勇気をチャージしているのだ。
 酒場にはいつも秘め事がある。秘め事とは、人が人として見られたくない部分であり、行為、内容、時間って事なのです。それが大人の世界って事なのです。だからね、私達のお店は最大限、その秘め事を守ってあげて欲しい。大切なお客様の明日を生きていく勇気の為にも、顧客の守秘義務を徹底して欲しいのです。
 今年一年もたくさんのお客様がアナタのもとを訪れるだろう。時に嫌な顧客もあるかもしれない。でも忘れないでほしい。私達はお客様にとって、唯一最後のオアシスだ。そして、アナタはそのお客様にとって、最後の女神であり、最強のヒーローなのだ。

酒は何も発明しない。ただ秘密をしゃべるだけである。    劇作家 F・シラー

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