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スタッフ通信
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VOL.70 2012/10
満席がもたらす効果
飲食店が繁盛する方法として、私が重要視する事のひとつに満席効果ってのがあります。それは日々、毎日、満席であるかどうかって事です。満席であることで得られる効果って事です。満席だから繁盛するのです。繁盛してるから満席である、なんて事は、あとからついてくるものなのです。
ん? なんのこっちゃ? あたりまえだろ! ってなる人もいるかと思いますのでもう少し、満席効果について極力わかりやすく書きます。
そもそも顧客は、満席状態の店にいる事で安堵します。満席の店に入りたいと願います。逆に閑散としている店を選んだ事を後悔します。自分は選択を失敗したんじゃないかと・・・。顧客は混雑した空間に安心感を覚え、そんな店に友人を連れてきた事に対して得意気になります。顧客は、その店を選択した自分の判断は間違いでなかった事に胸をなでおろします。それは行列心理に良く似ています。行列があると多くの人は何の行列か興味を抱きます。何か行列の先に自分にとって得になることがあるのではと考えるのです。日本人によくある集団心理です。国民性でしょう。これと同様に、満席なお店は自分に何か利得があるのではと、顧客は考えるのです。
更に顧客は、満席の状態で腰かけている自分に優越感を感じます。席に座れずお断りされ仕方なく帰っていく他人を見ると、優越感は更に増します。満席の状態でのひといきれは熱度となりライブ感が増します。満席状態のお客様の雑多な会話はBGMとなって場を盛り上げます。顧客の会話に消されぬようスタッフも声を張り上げます。するとそのスタッフのかけ声すら心地良く聞こえ、更に顧客は無意識のうちに興奮を覚えます。よく飲食店で飲むと飲みすぎるって言いますが、それは精神心理に訴えかける無意識な興奮状態が発生しているからなのです。
他にも満席の状態だとスタッフは仕事が多く、おしゃべりする間もありません。とにかく必死に頑張ります。かけ声を合わせてスタッフとアイコンタクト等を行い、的確に仕事をこなし、時に笑顔が漏れ出たりします。顧客はそんなスタッフの姿をほほえましく見るのです。頑張っているなぁって感じる事が顧客にとって勇気となるのです。仕事を楽しんでいるなぁって感情が明日の元気につながるのです。こんなふうに満席になることのすべては飲食店の強烈なエッセンスとなって、また時には飲食店の魂となって、顧客心理に刻まれていくのです。
満席で忙しい店は働いていても時間がたつのが早いです。さっき6時だったのにもう10時だ、なんて事はよくある話。満席でざわざわしているお店で働く事は、大変だけど、実に楽しいのです。お客様から多くの「ありがとう」を頂きます。学校でそんなに褒められたりしない子でも、満席のお客様からはたくさんのお褒めを頂きます。「美味しかったよ」って言ってもらえる。「楽しかったぁ」って言葉を聞いたりする。ポジティブな会話がそこにはあふれている。そんな空間にいる事はスタッフにとって幸せな事なのです。
客席を満席にするということは、いつもより秀でたサービスができます。人は忙しい時ほどいい仕事ができるものなのです。忙しい時程に頭が冴えるもの。みんなも経験があると思う。そう、忙しい時のアナタはかなりカッコイイ! 集中がアナタの力を増幅させ、いつもよりもいい仕事ができるのです。それに客席が満席だと、顧客はいつもより優しくなります。ウェイティングの顧客はいつも以上に不満足になるが、客席で談笑している顧客はウェイティングの不満足なお客様をみて更に喜びます。自分たちは座って食べている。と・・・。
満席で席が用意できず、帰っていく顧客の多くは必ずまた来店してきます。よほどの事がない限り、来店したいと考えています。いつも満席のその店にいったい何があるのかと興味心がやまもりなのです。自分もその店においてサービスを受けたいと渇望します。そしてこの顧客に対し、再来店する事に嫌味がなく、自然体になれる奇策を用意すると、再来店の可能性はさらに増大します。「入店できなくてごめんなさい割引券」みたいなものがあると、顧客は次の再来店に抵抗がなくなるから更に満席になるのです。
中にはあまのじゃくのような顧客もあり、お店から離れてしまう場合もあります。アンチ繁盛店の癖のある精神心理の顧客です。そんな顧客はほっとけばいい。あの店は流行っていると回りが騒げば騒ぐほど暇な店に行きたがる顧客もあるものなのです。それが自然な社会原理です。そんな顧客はほっといて、自店の望ましい形の顧客に対し全力を傾けていると、いずれその癖のある顧客も、友達に連れられてこちらにやってきます。その瞬間は単にブームとか社会現象とかから、本当の意味で実力のある店舗になったという証拠なのです。
満席であることは、料理に対する最終調味料として、料理の味に極上の影響を与えます。同じ見た目でおなじ味でも、満席で笑顔がやまもりの店と、自分たちだけのわびしい閑散とした店とでは、まったく意味が違う。味が違う。心が違う。見た目が違うのです。
満席であるとミスがミスでなくなる。顧客のテンションは高く、少しのミスも笑顔で通り越してしまう。閑散とした客のいない淋しい店でミスをして「本当にごめんなさい」と詫びる。もう、深い闇の底に落ちてしまうんじゃないかって思うくらいのダークネスさです。満席で活気がある店の中ではネガティブな言葉が掻き消えます。「本当にごめんなさい」って泣きそうな顔をすると、逆に励まされます。満席さが持つ活気と笑顔で、ダークネスはかき消され「いいって事よッ。頑張るんだよ」って励まされる。「気にスンナヨっ!」って励まされる。それが満席の雰囲気って事なのです。飲食店で元気をもらうとは、すなわちそういうことなのです。
店内が満席で活気があると、または店内が満席で笑顔があふれ返っていると、顧客はワクワクしドキドキします。何かいい事があるのかもしれないって考えます。ポジティブポジションって言って、人はポジな環境に置かれると更にポジティブシンキングは増加するのです。ネガティブも同じ。ネガな状況に人が置かれると、なにもかもが信じられなくなる。猜疑心は増大し、スタッフは自分の事をあざけているのではと勘繰る。正しい会計も間違っているのではとうたぐりはじめる・・・。不振店のパターンです。
想像してみて欲しい。人のいないディズニーランドに自分ひとり。野球観戦にポツリとひとり。はっきり言って面白くもなんともない。バカ野郎! って叫びたくなる。
人は悲しい生き物だし孤独な生き物だ。だから人は安心という名の群集を作る。群集は集団となって自分の生存本能を満たしてくれる。そこに笑顔がたくさんあふれると、それは人にとって、感動や満足や時に「美味しい」ってなるのです。
だからね、飲食店を繁盛させるためには、どんなことをしてでも、絶対に、やまもりの満席にしなければならない。店内も駐車場もトイレもテーブルの上もだ。埋め尽くされた客席。座布団。混雑した中で極上の笑顔を顧客から獲得しなければ、飲食店は絶対に繁盛しない。そしてその為にいったい何をするべきなのかを考えねばならない。そしてその考えを実行し、是が非でも行動し、いつも満席にしなければいけない。もちろん満席だけではダメ。きちんと、する事をして、やることをやって、顧客を極上の世界にまで持ち上げて、喜ばせて、バツグンのほほえみをゲットしなきゃならない。本当に繁盛するって事は、そんな満席状態の、演出作業からはじまるのです。繁盛するからまた更に繁盛する。逆に繁盛しない店は更に繁盛しない。そしてそのキーポイントとなるのは、満席かどうか・・・。
客席15席で満席な店。客席80席で20名が座る店。アナタならどちらに行きたいですか? 来店客の支持率は後者だが、繁盛しているように見えるのは前者・・・。
繁盛する為に行う色々な試みには莫大なエネルギーが必要です。でもすでに繁盛している店が更に繁盛するエネルギーってそんなにたくさんは必要ありません。だから、是が非でも、満席にしなきゃならない。それは飲食店が繁盛する為の鉄則なのです。
仕事は遊びだ。ゲームだ。 だからこそ徹底的に一生懸命やる 斎藤一人