スタッフ通信


VOL.63 2012/03
危険予測 注意喚起 未来予想
 飲食業は皆が思うほど安全な仕事ではない。それが私の長年の感覚です。そりゃぁ高所作業でもないし、いつもそばに危険があるわけでもない。しかし意外にも飲食業は怪我の多い職業でもあるのです。 
 飲食業は体力的にも非常にきつい仕事です。立ちっぱなしで長時間の作業はあたりまえだし、体力の消耗からして集中力の途切れやすい職業なのです。
 そんな飲食業の中で、私は今まで何度となく、肝を冷やすような怪我や事故を見てきました。すんでのところで大きな事故にならずにすんだと、ホッと胸をなでおろした経験などは数知れずあります。
 だから故、常に自分に言い聞かせていることが私にはあります。それは、絶対に無事に今日の業務を終わらせるということ。そしてその為に、いつもそらんじる言葉があります。それは、1、危険予測 2、注意喚起 3、未来予想 です。これは勉強会でも常に皆に教える言葉でもあります。どんなに声をあげてこれを説明しても、実際に怪我や事故などを経験していないスタッフにとってはキョトンと他人事です。
 先日の事です、私の知っている、とあるお店で大きな事故がありました。その事故でアルバイト高校生の右腕はミートクラッシャーに巻き込まれ、無残にも肩口からえぐり取られてしまいました。救急車が来ましたがすでに遅く、右腕はミンチになり、鮮血はキッチンを赤く染めました。なんとか命だけは助かったそうです。
 あのね、飲食業はそんな安全な仕事ではありません。長時間の労働の中で集中力は切れ、体力は消耗し、そんなアナタには、危険がいつも迫っているのです。私が声をあげて「キッチンでは走るなッッ!」と言ってみたって、大きな事故や怪我を知らない17歳にとって私は単にうるさい存在でしかないのです。
 だから私はいつも思うのです。皆の体と命を守らねばと。そしてその時に自分に言い聞かせていることが、今日の業務を無事に終わらせること。そうする為に私は、いつも危険を予測します。どんな細かいことでも許しません。スタッフの指にトゲが刺さってもそれは私の責任です。私がその原因を見逃したからです。体にやけどの跡がついてしまって何とも思わない人はいません。もうその段階で取り返しがつかないのです。だからいつも、歩くそのたびに、注意を探して、危険を予測しながら行動します。
 万が一、これは危険だとおもった時、それは徹底的にその注意を皆に知らせ、危険要因の根源を叩き潰します。ほんの1ミリ程度の釘のでっぱりも大きな傷を作る可能性があることを是非みんなに知ってもらいたい。うっかりミスや、ささいなやりとりから血が噴き出すことをアナタに知ってもらいたいのです。
「後ろを通る時には うしろを通りますって言いなさいッッッ!」後ろを通るときに、黙って通ろうとしたスタッフが、包丁に刺されそうになった光景を私は何度もみています。
 だから、あらゆる危険を探しだし予測する(危険予測)、そしてその根源を皆に知らせ叩き潰す(注意喚起)、その後は本当に安全になったかどうかを確認想像する(未来予想)。
 実はこれは現場のリーダーの一番重要な仕事のひとつです。
 アナタの同僚や後輩や先輩の体から血しぶきが出て、生命の危機が生じる。そんな恐ろしいことにならない為にも、リーダーだけではなく、アナタ自身にも知ってほしい。飲食業は常に危険であるということを! だから、いますぐに危険の芽を探して、叩き潰してください。皆の笑顔が消えてしまわないように! アナタの体に傷がつかなように!

進歩とは反省のきびしさに正比例する。     本田宗一郎(ホンダ技研工業創業者)

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