スタッフ通信


VOL.62 2012/02
飲食店はテレビドラマだ
 飲食店の営業はどこかでよく見たテレビドラマのようです。私はいつもそれを感じます。そしてこの話をいつもします。飲食業の営業は、つまりはテレビドラマの視聴率なのだと。
 連続テレビドラマには脚本やキャスト、制作スタッフやチャンネル。実にさまざまな要素があります。そしてテレビドラマのミッションは視聴率を上昇させる事にあり、その為には多くの感動や喜びや衝撃や意外性が必要です。
 視聴率とはすなわち顧客満足度です。これが上昇すればするほどに飲食店は繁盛します。ではその視聴率を上昇させる為に行う作業はどんな事でしょうか? その仕組みそのものが飲食業とテレビドラマ制作とは非常によく似ていると思うんです。
 豪華キャストで豪華制作スタッフ。ゴールデンタイムで予告CMもバンバンかかっている。今世紀最大の製作費で、今一番ホットな主役俳優。こんな恋愛ドラマ見たことない! そんなうたい文句だとアナタはきっとそのドラマが気にかかり、録画のセットをする事でしょう。飲食店だってまったく同じです。メニューや運営会社。価格帯や立地。初期投資や店舗コンセプト。こんな居酒屋ありえない! そんなうたい文句だと、一度は足を運ぼうかい、と思うでしょう。
 つまり、初回視聴率なんてものは、そんな前評判でどうにでもなるものだし、初回はどうしてもある程度は売上を たたき出したい って考えれば、前予算をしっかりかけてやればいいのです。さすればしっかりと来客してくれるだろうし、売り上げも当面は立つだろう。でもね、世の中そんなに甘くはない! 逆に初期費用の投入でビジネスが成り立つなら誰だってこんな楽な事はない。こんな楽に稼げるビジネスはないって事です。
 飲食業はね、すべての業界の中でも、一番難しいビジネスであると私は考えている。その難しい構造体を、簡単にやわらかく理解をする為に、もっとも身近にある表現をするなら、それが、飲食業はテレビドラマである、って事なのです。
 初回の費用投入で、ある程度稼ぎ出した視聴率も、その後は別です。その後、上がるか下がるかは、初回費用とは別の次元の事ですよ。アナタがその俳優をどんなに好きだとしても、アナタがそのディレクターのファンだとしても、話がつまらなくしょうもない題材だったら、観るにも耐えない苦しさです。その俳優の事も嫌いになるかもしれない。期待したディレクターに裏切られた感じかもしれない。そしてその状況もうりふたつ飲食店の運営と同じなのです。
 店舗がどんなに豪華で荘厳でも、いかに立地がよくて、看板が華やかでも、その後のストーリー、つまり心配りや気配りがなく、お客様を思う気持ちがなければ、土台から崩れ落ち、視聴率なんて稼げるわけもなく、結局はその店に足を運ぶ事はなくなってしまうって事なのです。だからそこには、いつも感動がなければいけない。そこには必ず喜びがなくてはいけない。笑顔やドキドキ感や、ぶったまげるような仕掛けや、心から涙するサービスがなくてはいけないのです。それが視聴率の上昇の秘密であり、それは決して初期費用でかなえられるものではないって事だし、この鍵を握るのは、そのテレビドラマをよくしようと考える制作人の熱いハートなのです。
 視聴率のいいドラマはスタッフやキャストに一体感があります。一致団結していいものをつくろうって気概があります。いつも明日のストーリーを熟読し、情報の共有をし、少しでもたくさんの感動の為に、脚本すら変えてしまうディレクターがいる。画面からあふれるパワーは視聴者にきっと届くだろうし、感動や驚きや発見や涙が時に、視聴者のものだけでなく、制作人であるスタッフのものになったりもして、視聴者と共に、多くの「ありがとう」を共有する事となる。視聴率はそうやって上昇するし、実はこれが飲食店をわかりやすく解剖するもっとも簡単な方法なのだと思うわけです。
 「家政婦のミタ」見ましたか? 驚異的な視聴率です。飲食店とテレビドラマを重ねて見ると、本当によくできた繁盛店で、まったくもって完璧でしたねぇ。アナタのお店には視聴率をあげていく仕掛けや仕組みが出来ていますか? 話題のドラマをたまに見るのもいいかもしれません。

 明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ ガンジー(インド独立の父)

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