スタッフ通信


VOL.56 2011/08
愛し愛されよ
 そのスタッフはいつもいつも洗い場で、一生懸命に汗を流している。
 来る日も来る日も、お客様が召し上がられたお皿を大量に洗い、その手は美しく、ごわごわしてて、とても温かい。
 そのスタッフは老齢ではあるが活発で、笑顔がよくあり、若いスタッフから信頼が深い。いつも洗い場でシンクを磨き上げ、元気になる言葉をみんなに発している。
 そのスタッフは自分が洗い場で汗を流すことで、みんなの大いなる力になっている事を知っているし、みんなもそのスタッフに心から助けられている事を知っている。
 そのスタッフは謙遜の言葉が多く、いつも陰でみんなの力を創造しているし、みんなはそのスタッフに敬意をもって接し、心から感謝している。
 あのね・・・、仕事の内容はいつの時代でもいろいろだ。
 飲食業の中にも色々なポジションがある。華やかなポジションがあれば、そうでないポジションもある。野球で言えばピッチャーもいれば、ベンチを温める補欠だっている。そりゃみんな華やかなポジションをやりたいって思う。だけど華やかなポジションばかりだとチームは存在できないし、試合には絶対に勝てない。
 そのスタッフは皆が意識しない事を意識している。お料理の残り具合から宴会のお客様の満足の度合を意識し、ドリンクの出数で盛り上がりの加減を判断し、洗い物の数からその日の忙しさ具合を把握している。
 そのスタッフはいつもいつも食器洗浄機の熱い湯気を肌で感じている。汚れて色落ちした制服を、自分にはちょうどいいと笑顔で言ったりもする。
 人が足りない時は、決まってそのスタッフにラブコールがかかり、緊急出勤をよくする。緊急出勤にリーダーが感謝すると、なにをなにを、と照れてたりする。
 あのね、私達は、そんな一人一人の大切なスタッフからなるチームであり、その有難さに感謝しなければならない。私達はね、ひとりひとりの責任の全うの中に存在し、ひとりひとりの仕事に深く敬意をもって接しなければいけない。
 もし、それが出来ないチームは、必ず亀裂を発生させ、やがては崩壊するだろう。
 それぞれの生活は破たんし、安定なる未来はなくなり、愚痴や、ねたみや、猜疑心などが生まれ、必ずや、良き方向には向かわないだろう。
 私はそのスタッフの縁の下の力持ちに心から感謝している。ずっとずっといてもらいたいと思っている。そしてそのチームのみんなもきっとそう思っているだろう。
 甘い事だけでは生き残っていけない時代であることは知っている。でも本当の意味で、それぞれの時間や、空間や、個性や、意思や、意見を尊重しなければ、飲食業なんてものは、必ずや、割れてしまうだろう。
 私は長い経験からそれを知っている。
 本当の意味で、継続し続けるって事は、懐深く、それぞれを抱擁し、これを慈しみ、大切に思うこと。
そして、本当の意味で、存在し続けるって事は、理解され、尊重され、時には敬愛され、一緒にずっといたいな、って思われ、多くのスタッフから、愛され続ける事であろうと思う。
 愛し、愛されよ・・・。当社の大切な理念のひとつである。
 どうせ生きていくなら、長く、愛し、愛されたいものだと、痛切に感じる残暑の頃です。

人に好かれるのは、人を好きになることの裏返しにすぎない  N・ビンセント・ピール

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