スタッフ通信


VOL.51 2011/03
東北大震災
 茨城で飲食店に勤務している若手店長から私宛に、無事を知らせるメールが届いたのは震災から数日たってからの事でした。その後も関東、東北各地から、無事を知らせるメールが幾多も届いてきました。私の知人は残念ながら一人が亡くなりました。福島で居酒屋を経営されている方でした。各地から震災の厳しい状況を伝えると共に、ビルが倒壊し実質上の廃業だとか、焼肉屋を経営されているお店のオーナーからは、流通が破壊され、電気がないため営業停止状態だ、等々。
 震災の3日後、各地の知人から物資のヘルプの声が届けど、商品を搬送できるすべすらない・・・。私は自らの力不足を恥じると同時に、被災された方々の運命のむごさをつくづくと感じ、人生のはかなさを痛く悲しい思いで見つめていました。
 ところがです。震災後の荒廃した中で、町の大工さんは皆の為に簡易風呂を作り、動けない老人の為に水をもらいに行く子供たちがいる。被災された人々の力強く生きようとする姿勢が、度々映像で流れてくるのを見て、この国はすごい! いつか必ず復活する! 落胆していた私は、力強く生きる被災地の方々から逆に元気をもらった気持ちでした。
 東北や福島の知人からはその後、続々と、前向きで立派に活躍しているぞ、との報告が届いてきました。食べ物を料理し、炊き出しを行い、少しでも元気を取り戻すように、頑張っていると・・・。
 この度の震災でこの国が受ける経済的ダメージ、心的影響力は多大なものがあります。こんな時、私達、飲食業、居酒屋業は一体何が出来るというのでしょうか? この未曽有の大災害に私達は一体何をするべきなのか?
 今、私達に、大きな事は何一つとして出来ないかもしれない・・・。でもね、私達には力強い武器があるじゃないか! 飲食店が持っている最大の武器。それは人々を元気づけ、町を元気づけ、たくさんの人たちを笑顔にし、この困難の為に、最大限の勇気や、明日を生きていこうと感じる活力を、私達は、お客様ひとりひとりに手渡すことが出来るじゃないか! その私達の仕事ぶりは、いつか必ずや、まわりまわって被災地の方々にも届くはず。そしてそれは飲食業が、居酒屋業がもっている、永遠の使命であり、社会に対する責任でもあると思うんです。
 みんなに聞いて欲しい! こんな時だからこそ、どうしても忘れないで欲しい!
 私達飲食業は、決して食だけを提供しているのではない! 私達は決して給料の為だけに働いているのではない! 私達は、心のこもった食を通じて、この国の未来を創造しているんだ! 私達はこの国の経済を担っているんだ。私達は世の中の、悲しいや、辛いや、はかないや、苦しい、など、人々が感じた涙を洗い流し、笑顔に変える仕事をしているんだ! だから誇りをもって仕事をしようじゃないか! そりゃ、たいしたことなど出来ないかもしれない。でもね、私たちが各地各店で作り出すその笑顔の数々は、いつか必ず被災地に届き、この国を優しく包み込み、やがてはそれが未来となって、私たちの心にほんのりとした、やすらぎをもたらせてくれるはずだと思うんです。
 被災地から戻ってきた自衛隊の隊長から私に電話が来ました。現地は凄惨な状況で隊員の心も疲れ果てていたので、私たちの店で慰労会を行った、と。そして、その時の店員さんの心遣いが強く隊員さんたちに届き、心底、涙の出る思いだったと・・・。あの一杯のビールが私達に力を与えてくれたし、また新たにその力をもって、現地に向かう予定だと・・・。
 私達に出来る事は少ない。でも、今、この場所で、私達にしかできない事はきっとある・・・。
 今回の震災で亡くなった方々のご冥福を祈ると同時に心からお見舞いを申し上げます

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