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スタッフ通信
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VOL.49 2011/01
期待値と実態値
今アナタは、とある飲食店に入ろうとしている。初めて入る飲食店だ。アナタの思考回路にはこの時、意識と無意識とがおりまぜになって、ある種の期待感のようなものが巻き起こります。期待感は おおきい ちいさい 関係なく、必ず脳みそに発生します。実はこれを期待値と言って、お店にとってもお客様にとっても、かなり大事なものなのです。
何が大事かって? つまりね、期待値とは最初の基準ラインだからなのです。
簡単な例をあげます。東京の下町に、とある焼鳥屋さんがあってね、まるでボロぞうきんのような入口に、汚い赤ちょうちん。普通で言えば絶対に入ったりしない飲食店です。周りに食事をする環境も見当たらず、コンビニか、はたまたボロぞうきんか・・・。アナタは考えたあげく、生ビールだけでもと思い、勇気をふりしぼって、損する事を覚悟にその扉を開けると、あらら!? 中はお客様で満席です。どのお客様も笑顔で楽しそうに、焼鳥をほおばっている。空いている席は見当たらず、いい匂いと冷たい生ビール・・・。
さて、この時、アナタは脳みそで何を感じますか?
先ほどまで、コンビニか、汚い赤ちょうちんか、で悩んでいたアナタの脳みそに、食べたい! の興味や、座りたいの欲望、が発生するはずです。これが実態値って事なのです。
人は意外性のある事に心を奪われます。目玉焼きを作る為にタマゴをわる。中から醤油が出てきてフライパンは醤油だらけ。驚きますよね。でもこの時、確実にアナタの脳みそは、混乱し、興味心を抱き、記憶に残る。ではなぜそうなるのか? それが期待値と実態値。もっとわかりやすく言えばね、期待値と実態値との 差 って事なのです。
もうわかってきましたか? 人はいつも、この、期待値と実態値の数値化を脳みそで行っています。そしてその差が大きければ大きいほどに、記憶に残り、動揺し、興味を抱き、はたまた混乱する。いわば心と脳みそをかき乱されるのです。
汚い赤ちょうちんの店なら、期待値 も小さいでしょう。そんなに期待をしていない店が満席であったり、大将から一品がサービスされたり、おかみが温かいおしぼりを手渡しでくれたり・・・。アナタは思うでしょう。この店はなかなかいい店だなと。
同じ事が、最近オープンしたおシャレな居酒屋だったらどうでしょう。普通です。まったく普通・・・。だからサービスの一品も、温かいおしぼりも、お客様の心には響きません。
これが期待値と実態値。そしてその 差 って事なのです。
そして私達の飲食店です。例えばアナタの働くそのお店に対して、お客様は一体どんな期待を持っているでしょうか。アナタは考えた事がありますか? どうせやるならやっぱりお客様に喜ばれたい。でもね、頑張って笑顔で灰皿を交換してみても、必死にサービスの一品をプレゼントしてみても、期待値と実態値との差がなければ、あたりまえの事として、お客様の心には、何の混乱も、何の動揺も、何の喜びも与える事はないでしょう。
期待値は実に大きなハンデ(壁)としてお店側に立ちはだかります。逆に期待値を与えるようなお店でなくては来店される事も少ないでしょう。私たちの運営するお店はそういう意味で、しっかりと期待値をくすぐる演出が、あそこにも、ここにも散りばめられています。で、あれば、お店側はその期待値のハンデ(壁)を乗り越えねばならないのです。でないと、お客様にある種の感動を与える事は出来ないのです。しっかりとしたお店を作る事によって生じるハンデと、しっかりしていないお店の持つ優位性と来店動機の希薄さ。さて、アナタのお店は期待値の壁を乗り越える何かをきっちりと持っているでしょうか?
今年一年が去年よりも、ほんの少し、成長できる日々である事を心から願います。
ただ一言で別れられるなら、やはり一言で、やり直せるかもしれない 連城三紀彦(作家)