スタッフ通信


VOL.46 2010/10
視線を変えてお店をみる

そのお店がいいお店だなぁと感じる要因って一体なんだと思いますか? そりゃお客様にとってはまちまちですよね? いいお店だと感じるお客様もいれば、そう感じないお客様もいる。自分の好みの味覚に合う合わない、お客様にとっては人それぞれかもしれません。サービスもそうです。受けたサービスをどう感じるかは個人の好みによるところが多少なりともありますよね。空間もまたしかりです。
 ではいい店かどうかを判別する、別の物差しがあるとすればそれは一体なんでしょう? それはね一度視線を変えてみる事です。一般的に飲食店は、良い店であるかどうかを、いつもお客様目線でみる事が多く、お客様がどうであるか、そればかりを終始する傾向があります。しかしこれは大きな間違いです。その店が良いお店であるかどうかの根底を左右するのは、実はスタッフの視線や気持ちであるという絶対的な事実を知らねばなりません。
 ん? どういう事? そう簡単に言えばね、スタッフの視線や気持ちが、その店を良いお店に変えていくという事なのです。つまり簡単に言えば、その店で働くスタッフがその店の事をどう感じ、どう評価しているのかって事です。
 その店で働くスタッフが、その店に対して良いイメージを持っていない場合、お客様もこれに比例し決して、その店を良くは思ってくれないでしょう。逆にその店で働くスタッフが自分のお店に対して高い評価をしていて、私のお店は自慢できる良い店だわ、と感じている場合、お客様もそれ以上にその店の事を良い店だと思ってくれている事でしょう。
 これは自信の表れであるとよく言われます。例えば友人を自分の家に迎え入れる時、自分の家に自信がなく、汚れているなとか、デザインや空間に自信がないなとか、寒いな、狭いな、など家主に自分の家に対する自信がないと、友人もそれを察して、家主の抱いている感情と同じ感情を持つものなのです。逆に自分の部屋に自信があると、招かれた友人もこれを察して、いい家だねぇって事になるのです。
 何年か前に私がタッチしたそのお店は、働くスタッフに自信がなく、自分の働く空間や環境が嫌いで、出来る事であれば早く仕事を切り上げたいとまで思っていました。私はまずスタッフに自信を取り戻す作業を開始しました。空間や環境を徹底的に磨き上げ、整理整頓し、落書きのすべてを消し、正しい事を正しくする活動を行いました。次第にスタッフ達は自分の働く空間や環境に自信を持つようになりました。すると次に、ああもしたい、こうもしたい、などの自我が発生するようになりました。まるで自分の部屋を飾るように、まめに心を込めて、あらゆる部分に手を加え始めます。ダメなルールはすべて廃止し、良いルールをどんどんと取り入れました。みるみるとスタッフの表情は輝き始めました。自分の働く環境が大いに好きになっていったのです。
 飲食店はね、お客様だけに気に入られたとしても、それは本当の意味で、良いお店であるとは言えません。大事な事は、お客様以上に大切であるスタッフ達がその店を気に入り、私のお店は良いお店であると感じてくれるかどうかなのです。
 「こんな渋いお店で働けて、俺めっちゃ、うれしいっスッッ!」
 数年前、とあるお店をオープンする時、オープニングメンバーが私に言った言葉を、私は今も忘れません。そのスタッフは卒業して今はいないけど、その時の気持ちを私は今も忘れないし、そんな風に思ってくれるスタッフ達の数をどんどん増やしていこうと今もまじめに考えています。なぜなら私達の店はそこで働くスタッフのものであり、ゲストとして来店されるお客様のものなのですから。
 アナタの働くそのお店、アナタは好きですか?

 ばい菌が病気ではない。その繁殖を許す体が病気だと知るべきだ。石橋湛山(大正 政治家)

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