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スタッフ通信
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VOL.43 2010/07
飲食店の理想的広告とは!?
6月のスタッフ通信を読んだ、とあるスタッフからこんな質問が私に寄せられました。
―― 上位顧客のお客様は、実は、とっても大きな力を持っていて、本当の意味での、飲食店の広告費とは、この上位顧客に大きな力をかける事が、最も効果的である ・・・とありますが、これはどういう事でしょうか(以下省略) ――
そうですよね。少々紙面文字数の関係もあり言葉足らずで難しかったですね。
では、今月は、飲食店における広告戦略にクローズアップしていきましょう。
広告とは非常に奥の深いものです。各業態で広告戦略や理想的広告論は大きく違ってきます。では飲食業における理想的な広告の形って一体どのようなものなのでしょうか?
飲食業の理想的なる広告の形とは本来、価格訴求広告などではなく、信用獲得のきっかけ広告、でなくてはならない、というのが私の考え方です。それは価格だけでは量る事の出来ない部分が飲食業では多すぎるからです。
そもそも価格を全面に押し出す広告というのは、利用者にとって客観的に、高いか安いか、を判断する情報を提供しているのに過ぎないのです。この広告戦法が通用する業態は、スーパー・小売業だとか自動車などのように、どこで買っても同じ商品が手に入る場合に限られるという事です(同じ商品だから高いか安いかの判断がしやすい)。
しかし飲食業はいくらの価格といっても、お店によって提供されるものがあまりにも違い過ぎるので、価格広告というのはいつも集客につながるとは限らず、利用者は冷ややかにその広告を見ている場合が多いのです。また価格広告は、単純に利用者に誤解を招くだけで、逆にクレームになる危険性もはらんでいます。例えば、安い安いって聞いていたけど最悪の接客だわ、とか、安いけど量が少ない、とか、安さだけだわ・・・、って感じです。
つまり飲食業はライバル店と全く同じものを販売している訳ではないので、その価格に対して、どのようなボリュームで、どのような空間で、どのような接客で、などと事細かに記載しないと、利用者は正しく判断できないのです。だからゆえに価格広告がすぐ集客につながるかと言えば、決してそうではないって事なのです。
つまり、価格を全面に出した広告 → すぐに集客につながらず冷ややかな目 → 広告としての効率が悪い って方程式が成り立ちます。
では飲食店が押さえておきたい広告の理想的な形とは・・・。
とある信用調査会社によると、その飲食店に行こうと思い立ったきっかけの約6割が、親しい友人からの紹介、でした。いわゆる口コミって事です。あの店は良かったよ〜。とか、あの店は絶対行った方がいいよ、とかを仲のいい友達から言われれば、それが一番の来店動機になるって事です。口コミの力ですよねぇ。皆も経験があると思います。
とすると、この口コミをもっともっと誘発させれば、店は来店数が増えるって事になりますよね? ではこの口コミは一体どうやって誘発させればいいのでしょうか?
私はこの口コミを誘発するかどうかの判断を、その店の土壌(ベース)という言葉でよく表現します。ベースラインがどの程度高いかどうか、それはその店の土壌(ベース)が良いか悪いかって事です。
美味しい野菜はいい土壌(ベース)からでしか作る事は出来ません。そりゃ一度強い農薬(単純広告)をまけば、最初は農薬たっぷりの野菜が楽にして少しは収穫できるかもしれない。だけどそんな事はそうそう繰り返したりは出来ません。土はやがてやせ細り悪化する。野菜も次第に出来なくなり虫さえいない状態。それでも農薬をまけば、畑はやがて死に、ついには収穫不能になってしまうのです。
そうなのです。そのお店にとって最も大切な事は、いい土壌(ベース)かどうかって事なのです。いい土壌(ベース)はいつの時代も、いい口コミとなって、いい野菜を収穫します。そしてこの時、お客様から強い信頼を獲得する事ができ、さらに土壌(ベース)は良くなります。こうなって来るとすべての仕掛けが上手く機能しはじめます。本来は効果の薄かった価格訴求や紙面広告がたちまち強い意味を持ち、効果を発揮し始めます。
逆に、この土壌(ベース)がないお店は、広告(農薬)を山のようにまいたとしても、その広告(農薬)費用はすべてドブに捨てているのと同じどころか、土を殺してしまいかねないって事なのです。そして実は、この土壌(ベース)を私達の知らないところで口コミマスターとして、一生懸命になって作ってくれるのが、そう・・・、上位顧客(ロイヤルカスタマー)であるって事なのです。・・・なんとなくわかってきましたか?
例を言うなら、当社がいつも行っている100円ドリンクサービスは、あくまでも当社に向けられたお客様からの信用の歴史という土壌(ベース)があるから成立するものであり、他の飲食店がこれをやって当社の運営店舗と同じ効果が簡単に得られるかというと、まったくそうではありません。また当社の中でも反応のいい店とそうでない店がありますが、これはいわゆるその店の持つ土壌(ベース)であり上位顧客の数って事なのです。
――で、冒頭の質問内容。上位顧客に対して広告費を大きく割く事が最も効果的とは一体? 先にも言いましたが、上位顧客(ロイヤルカスタマー)はいつも口コミを誘発してくれます。その口コミは【拡声器】となって、実際の広告費より安く、実際の広告力より力強く、お店をバックアップしてくれるのです。しかしこの構造を知らない飲食店が世の中には多々あり、上位顧客(ロイヤルカスタマー)には実際のところ何の恩恵もなく、やがてはその力強さも弱ってくる、というのが現実です。
つまり繁盛店を作り出す、飲食業の理想的広告方法は、本来、不特定多数の紙面広告などではなく、ピンポイントの上位顧客(ロイヤルカスタマー)、に向けられるべき、『伝播広告』が、最も効率がいいということになるのです。※伝播 → 伝わり広まること。
そしてこの『伝播広告』を成立させるために、土壌(ベースライン)を高め、土壌(ベースライン)を高める為に、初めてする事が、価格訴求広告などではなく、信用獲得のきっかけ広告、でなければならないのです。そして更に、信用獲得のきっかけ広告が『伝播広告』であれば、最高のリングを構成する事が出来るということなのです。
→ 土壌(ベースライン)を高める → 信用が得られ顧客からの伝播広告が発生する → 伝播広告は信用獲得のきっかけ広告を生み出す → 更に土壌(ベースライン)が高まる → 信用が更に得られ伝播広告は一段と強くなる 繰り返す・・・・。
どうですか? 理想的広告効果を考えると、――上位顧客のお客様は、実は、とっても大きな力を持っていて、本当の意味での、飲食店の広告とは、この上位顧客に大きな力をかける事が、最も効果的である ―― の意味がわかってくれたでしょうか?
飲食店として繁盛し成功する為には、ここを理解して広告を作成する必要があるのです。
ではここで言う、上位顧客(ロイヤルカスタマー)に対する広告的働きかけって一体どうすればいいのでしょうか? いい土壌(ベース)を誘発してくれるようにするためには一体どうすれば・・・? 本当はここが核心ですよねぇ。実に難しいところです・・・。
広告とは実に奥深く、人々の深層心理に働きかける行為です。正しく利用すると、飲食店は広告効果のねばりが特に強く、一度ファンを作るとそうそう簡単に離れるものではありません。ここはひとつシャープなアナタのその頭脳を駆使し、みんなで意見を出して話し合ってみてください。今ここで核心のアンサーを読むよりも、アナタの考えるそのアイデアや意見の方が、お客様を強く強く虜にするかもしれません。アナタのお店の広告が今までとは違い、別の新鮮な切り口である事を心から楽しみにしています。
いつも何かを模索し、何かを求め、手をさしのべておかないと運は降りてこない。 伊集院静