スタッフ通信


VOL.27 2009/03


 出会いと別れの春です。飲食業はその業態柄この国の出会いと別れをいくつもいくつも作り出して来ました。数々のお客様が来店されては出会いがあり、また別れがあり・・・。そのテーブルには笑いがあり、時には涙があり。
 思えば、居酒屋業やレストラン業は、単に食事をする空間というものではなく、実に様々な人生の断片を切り取って来ました。ある時は恋人同士の愛の語らいの空間だったり、また疲れた企業戦士のエネルギーチャージの場だったり、未来を夢描く青年達の元気の源だったり、家族のふれあいの場だったり、数えるとキリがないくらいに人と人の交流の場を我が業種はこの国の中で演出して来ました。それはこの国を支えていると言っても過言ではありません。会社の将来や人生の将来、家族の過去や未来、友達との友情の形、そんなあれやこれやという場をレストランビジネスはこの国の中で演出し続けることが、実はこの国の経済を支え、この国の縁の下の力持ちとなっているのではないかと、私は本気でいつも思っています。
 美味しい料理があって、優しい心配りがあって、心地よい空間があって、人と人がそこにいて、交流が高まり深まる。そしてそれがこの国の原動力となっている。心のこもったありがとうの言葉を他の業種より実にたくさん頂き、またの出会いが他の業種よりもたくさんある。なんとすばらしいビジネスなんだろうといつも思います。
 第一次世界大戦前、アメリカのある地方都市の酒場が禁酒法により激減したことがありました。その町の犯罪率はたちまち上がり、闇の酒場が横行したと言います。
 私はこの飲食業に誇りを持っています。私たちがいなければこの国は崩壊すると思っています。飲食業がこの国の未来を創造し支えてきたと思っています。そんな強い気概をもって私はこのビジネスを行って来ました。
 時は100年に一度の経済不況と言われています。ハローワークはいつも大盛況で、未だかつて経験したことがないくらいに、人材の紹介電話があとを絶ちません。モノは売れなくなり、製造業は疲弊し、メーカーの決算は異常な程に悪く、株価は目もあてられません。
 この国はいったいどうなっちゃうんだろう? 本当にこの国は大丈夫なんだろうか?
酒場が荒れると国は荒れる。酒場が枯れると国は枯れる。酒場は国の血だ。これは有名なギャングスターの言葉です。
 こんな厳しい時代だからこそ、元気を出してもらえる なすグループでありたい。
私達は単にモノを売る商売と違い、心をお客様に届ける商売をしていると言うことを知って欲しいのです。そりゃぁ大変な仕事です。通常の仕事より時間は長く体力的にもしんどい仕事です。でも、だからこそ、そんな大変な仕事なのだから、大変な分だけはお客様から「ありがとう」の言葉や「笑顔」をもらわなきゃ損だと私はいつも思っています。この考え方があるかないかでこの仕事の疲労度合いは違って来ます。来店されたお客様に「また来るでぇ〜」「ありがとう。美味しかったわぁ」こんな言葉をたくさん投げかけられればその度ごとに、実は私たち自身の心が、やんわりと、そしてほんのりと、豊かになって来るという事実を知って欲しいのです。
 ビジネスとして飲食業をとらえた瞬間、お金儲けのツールとしてのみで飲食業をとらえた瞬間、さ迷いの暗黒に突入し、この仕事は苦痛となり、何をやってもつまらなくなります。喜びを見いだすことが出来なくなり、さ迷いの中に入ってしまうのです。
 物事は複雑なように見えていつも単純。美しい「桜」を求める人々のように、今、アナタの笑顔を求めているお客様がたくさんいる。この事実の、なんと、すばらしいことか・・・。
 幸福というのは最後の目的地のことではなく、旅のしかたのことなのである M・ランベック

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