スタッフ通信


VOL.14 2008/02
一期一会
 出会いと別れの季節です・・・。当社は新たな店舗 ラ・トラビアータを1月にオープンし、モーニングも含めたレストラン業態に初進出することが出来ました。私自身このお店の営業に出て再確認した体験がいつくかあり、初心に戻る意味で非常に勉強になりました。その中にて思うところの大きな柱が冒頭に書いた、出会いと別れです・・・。
 今まで地域密着型の営業を主体としてきた当社は、この出会いと別れを大切に・・・とは思いつつも、常連のお客様に恵まれ愛されてきた為、心のどこかでまた会えるという逃げやいい訳のような思いがあったというのが私自身のナイショの本音です。反省してます・・・。
 しかしモーニングの営業はそれとは全く違っていました。それは今朝のお客様にはもう二度と会えない可能性が非常に高いという事です。今のこの出会いは今生の別れになるやもという事です。強烈にそれを感じたのは、ある老夫婦が朝食を召し上がられた時の事でした。あまりに暇だったので話しかけてみたところ快く会話が始まりました。
 老夫婦は還暦の祝いもかねて、東京から冬の天橋立にカニと温泉旅行に向かうところでした。ところが雪で電車が遅れた事もあり、この町で途中下車して福知山観光にでも、という事になったのでした。歴史が好きなご主人で光秀ゆかりの地である福知山城を見てみたいとの事。他の観光地はあるのか、こんなにいつも雪が積もるのか、城までは歩いていける距離なのかどうか、など。奥様は寒さを気にしているようでした。やんではいましたが外は雪が多く、とても歩きでは無理との事を伝え、身支度を整え鞄も持っていたこともあり、駅にあるタクシーを私はオススメしました。
 朝食のリゾットを大変気に入って頂き、奥様の分まで食べていたご主人は、洒落と少々キザなところが俳優のようで、実に感じの良い紳士でした。私の事を気に入ってくれたらしく、接客をしていてとても気持ちの良い朝でした。一通りの会話が終わり、お礼を言い、旅の道中の無事を祈る言葉を交わし、自動ドアの向こうに老夫婦は去っていきました。
 なんだか今日はいい日になる予感がするなぁ。そんなお客様だったなぁと思いながら、珈琲メーカーに珈琲をセットしていると、椅子にご婦人のマフラーが残されているのに気がつきました。こりゃいかんと私は慌ててそれを手に取り、駆け足で走り、老夫婦を追いかけました。フロントを出て、道を渡り、バス亭近くで「お客様ッ〜」と叫んだその時、実に豪快に転倒してしまいました・・・。幸いにも私はそんなに濡れずにすみました。しかし、手に持ったマフラーは濡れてしまいました・・・。すぐに雪をはたいて濡れた部分を胸でこすって拭きました。でもマフラーは濡れていました・・・。申し訳なくこれは大失態だと思っていると、ご主人が微笑んで私に言いました。「大丈夫かい・・・。この町は実にいい町だねぇ。」その一言で救われた気持ちになった私は丁寧に謝罪し再び別れを告げました・・・。
 一期一会。もう会うことのないだろう老夫婦の背中を見て、私は少し両親の事を思いました。あのご夫婦にとって私の存在はどんな風に心に残っただろうか・・・。トラビアータの朝食を美味しそうに食べる姿が私の脳裏に今も深く残っています・・・。
 その出会いを大切にして人生を歩んでいく事がいかに難しく、いかに重要な事であるか。随分とあってない両親が、老夫婦の姿となり私に教えてくれたような気がしました。
 皆さんにとってこの仕事はどう映っていますか? 日々出逢うそのお客様の幸せを創造し、お客様と共に成長し、その心の中に残る・・・。この仕事はなんと面白きことであろうか。言わばアナタはその出会いに幸せを運ぶ天使であり、その創造主なのかもしれません・・・。

 人生を幸福にするためには、日常の些事を愛さなければならぬ。    芥川竜之介

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